月と六ペンス

月と六ペンス

以下、チャプターズでご紹介時の推薦文です。

ページ数: 378ページ
ジャンル:長編小説(海外文学)
読みやすさ:★

<あらすじ>
画家ゴーギャンをモデルに、芸術のために安定した生活をなげうち、死後に名声を得た男の生涯を描く。ストーリーテラーとしての才能が遺憾なく発揮された傑作。

<おすすめポイント>
20世紀初頭、花の都・パリ。
当時のパリはまさにアートの中心地で、美術の授業で誰もが一度は目にしたであろう偉大な画家たちが、こぞってパリへと集まっていました。

この時代にパリにいた外国人芸術家たちを「エコール・ド・パリ」と総称することがあるのですが、本作は、そんなエコール・ド・パリ(厳密ではないですが)の周辺人物である一人のアーティストがモデルとなった、およそ100年前の物語。

証券会社で働いていたごく普通の男性が、ある日突然家族を捨て、画家を志しフランスに旅立つところから物語は始まります。
何不自由なく暮らしていた生活を突然投げ出し、絵描きとしての第二の人生を切り拓く主人公。芸術に取り憑かれた男は、いらないものを捨て、性格までも変え、創作意欲に心血を注いでいきます。

「人はなりたい姿になれるわけではなく、なるべき姿になるのだ」(本文より引用)

夢だけを信じる主人公の生き様は、あまりのストイックさが痛々しく、また美しくもあり。

本作のキーワードとしては、夢と現実・価値と無価値・自分と他者。冒頭50ページ、時代設定からくる硬めの文体になれるのに少し時間がかかりますが、その先のドラマチックなストーリー展開、そして、人生に通ずる名言や思想が随所にちりばめられている点が本作の魅力です。

20世紀を代表するイギリス文学の最高傑作とも呼び声高い本作。教養・面白さ、どちらの観点からも読んでおいて損はないでしょう。

作家・原田マハさんの描くアートミステリーの世界観を愛する方には、絶対ハマるはず!アートなパリへ行ってらっしゃいませ。

推薦文寄稿:Chapters bookstore 書店主 森本萌乃