読了しやすさ:★★<あらすじ>その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。<スタッフおすすめポイント>長く続く寒空の下、ホットミルクと共に1ページ目を。
記憶狩りによって、消滅が静かに進んでいくある島の物語。昨日まであった言葉たちが消えてゆき、人々は何を無くしたのかさえも忘れてしまいます。
""可惜夜(あたらよ)”ーー明けてしまうのが惜しい夜を表す古典日本語です。記憶狩りを恐れつつホットミルクで温まる夜の情景に、こんな言葉が重なりました。静かな夜を過ごしたい方には、大変オススメの一作。
あくまでも選書者の一主観ですが、ストーリーの面白さと合わせて言葉を大切にキャッチしたいと思わせてくれる作品でした。“涙は必死で心が抵抗している証拠”という一節が、私は今も心に引っかかって離れません。普段聞き慣れた言葉でさえも、記憶狩りのいる世界を通して見ると新しい言葉に聞こえてうっとりしてしまうから不思議です。
2020年、世界的に権威のあるイギリスの文学賞・ブッカー賞にて、国際翻訳部門の最終選考まで残った日本の女性作家の作品、教養としても読む価値ありです。
推薦文寄稿:Chapters bookstore 書店主 森本萌乃
全国一律330円(税込)※送料は、複数ご購入いただいた場合でも1商品ごとに発生します。
現役書店員や出版社の方と、時間をかけてじっくり丁寧に選書。直感でお選びいただくことで、普段自分では手に取らないような本との出会いをお届けします。
2024年4月にオープンした市ヶ谷の実店舗「チャイと選書 Chapters bookstore」では、お客様一人ひとりのお気持ちに寄り添った選書もご提供しております。