ページ数:240ページ読了しやすさ: ★★★★過去のトラウマをひきずり、恋愛も仕事も不完全燃焼でどこか冷めた主人公は、高校の教師になり不本意ながら文芸部の顧問に抜擢されます。部員はたった1人、図書室で放課後の退屈な時間を過ごしているうちに、自分の中の変化に気がついていきます。本作で語られるのは、"本"ではなく本のある"空間"の魅力、これがとても面白いなと感じました。本屋も図書館も、本に囲まれることで少し心が落ち着いたり、知らない間に小声で喋っている自分がいたり。もしかしたらそれは、ひとつひとつの本に込められた幾多の人生や物語を、物質的に目の当たりにすることで、自身の人生から少しだけ逃避行できるからかもしれません。図書館の窓から見える季節の移り変わり、癒されていく主人公の心の傷。主人公の傍にいつもいる文芸部の部員と主人公の弟、2人の若者が名言炸裂なので推薦者(=森本)としてはそこにもぜひ楽しんでいただきたいところです。物語全体がいい感じに気だるいので、今立ち止まりたい方や、秋の夜長の1人の読書時間にもそっと寄り添ってくれそうです。
推薦文寄稿:森本萌乃
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