【東】202108

ページ数：197ページ
ジャンル：中編小説（海外文学）
リゾート気分：★★★★★
教養度：★★★★★
読了しやすさ：★★

＜あらすじ＞
ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう――。
南仏の陽光に導かれ、ひと夏のバカンスがいま始まる。

20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経ても尚輝き続ける名著。


＜スタッフおすすめポイント＞
都会の喧騒を離れ、パリから南へ600km。
コートダジュールのバケーションハウスで過ごす、パリジャンの正統派バカンスはこちら。

ニースやカンヌなどフランス屈指のリゾート地が集結するコートダジュールは、夏のバカンスを楽しむ陽気なフランス人で毎年賑わいます。
想像するだけで羨ましくなる完璧な夏のシチュエーションですが、本作に登場する父と娘の一夏のバカンスは、読み手がひやひやするほどに繊細で危うげ。

物語のあらすじは、書き出すと一気に陳腐になるのでやめておきます。短い物語なので読んでこそ味わってほしいなと思います。

ストーリーと合わせ、作中にちりばめられた名言の数々に、読み進めるとチクリと胸を刺し美しさに目眩を覚える、言葉の日射病のような作品。今回のイラストのように、月明かりの下で静かに読むのも良さそうです。

フランスを代表する女性作家の処女作、当時18歳の彼女が描いた夏は、恐ろしいほどに美しく悲しい恋でした。

不朽の名作で、この夏を締めくくるのはいかがでしょう。
今回の選書の中心ともなった作品です。

推薦文寄稿：Chapters bookstore 書店主 森本萌乃